台湾では「神ドラマ」と言われている、タイムスリップ&ラブミステリーよ。
すでに日本でのリメイクが決定しているのよね。
「よく考えられたタイムスリップ物語」だったわよ。
「なるほど、そういうアイディアがあったか!」と思ったわ。
台湾ドラマ『時をかける愛』。
有名なドラマ制作チーム「三鳳製作」×演技派女優アリス・クーというだけで、見る価値のあるドラマです。
最初は「よくあるタイムスリップものかな?」と思ったのですが、良い意味で裏切ってくれます。
「そういう事だったのか!」と謎が解けた瞬間の気持ちよさ。
これだけスッキリ感があるドラマは久々でしたね。
この記事では、ドラマの感想とドラマの謎を解説します。
それでは以下、ネタバレありです。
6,000文字を超える長文ですが、ぜひ最後まで読んで下さいね。
各話の詳しいあらすじはこちら
「メビウスの輪」がモチーフ
『時をかける愛』は、メビウスの輪をモチーフにした物語です。
王詮勝と黄雨萱の婚約指輪もメビウスの輪になっていますね。
裏も表もない、真ん中を切っても輪っか状で存在し続ける、メビウスの輪。
このドラマの「時間の輪っか」は、まるでメビウスの輪のように繋がっています。
使われているのがカセットテープというのもキーポイントですね。
A面とB面で表と裏を表していると思います。
タイムスリップの秘密
まずはこのドラマの根幹となるネタバレから。
- 現在と過去を行ったり来たり
- 物理的に体が飛んで行くのではなく、魂が乗り移る
- ヒロインは現在⇔過去をタイムスリップ、主人公はその間の時代をタイムスリップ
「その間の時代をタイムスリップ」という点が、とても斬新だなと思いました。
ヒロイン(黄雨萱)は、2019年から1998年へタイムスリップ。
2019年、見知らぬ人から贈られたカセットテープをバスの中で聞いていたヒロイン。
気付いたら、1998年を生きている陳韻如という女子高生に魂が乗り移っていた。
高校の同級生の李子維(主人公)は、死んだ恋人の王詮勝にそっくりだった。
(そして2019年と1998年を行ったり来たり)
主人公(李子維)は、2003年から2010年へタイムスリップ。
1998年から5年後の2003年、主人公(李子維)は交通事故に遭ってしまう。
彼は目が覚めたら、2010年を生きている王詮勝という男子高生に魂が乗り移っていた。
今の自分は、王詮勝。
黄雨萱のあの話は本当だった。
黄雨萱に恋をしていた主人公(魂は李子維の王詮勝)は、2010年を生きている黄雨萱を探す事にした。
2011年、主人公は黄雨萱と同じ大学に入り、黄雨萱を探し出す事に成功。
主人公の猛アタックの末、主人公と黄雨萱は交際を始めた。
そして時が経ち、2017年に。
王詮勝(魂は李子維)は、上海へ行くために飛行機に乗る。(★後述)
この飛行機に乗れば、事故で王詮勝が行方不明になる事は知っていた。
なぜなら、1998年に黄雨萱がそう言っていたから。
それでも王詮勝は飛行機に乗った。
なぜなら、王詮勝が死んだ事によって黄雨萱が1998年にタイムスリップして来て、自分は彼女を好きになったから。
予定通り、飛行機事故に遭う王詮勝。
彼は目が覚めたら、2003年の交通事故に遭った李子維だった。
王詮勝として黄雨萱と過ごした日々の記憶を持ったまま、2003年から再び李子維として生きていく彼。
そのままの時間軸で2019年を迎え、彼は黄雨萱にカセットテープをこっそり贈ったのだった。
「その間の時代をタイムスリップした」
この謎が解けた時のスッキリ感が凄かったわね!
「なるほど、そう来たか!」と。
タイムスリップものはたくさんあるけど、その着眼点で描いた物語はあまりないと思います。
主人公目線で言うと、
未来からタイムスリップしてきた女性がいた。
自分はその女性に恋をした。
じゃあ、その後、自分が未来へタイムスリップしたら・・・?
という事ですね。
1回目の視聴では、上記の赤文字の部分さえ理解できれば十分。
全26話に渡るミステリーです。
1回目で全てを理解できた人は、制作側になれますよ(笑)
二人の李子維
上記の「★」の部分。
王詮勝(魂は李子維)と、「本来の李子維」(歳取ってる方)が空港で対面します。
このシーン、私も一瞬「ん?そんな事ある?魂二つ存在してない?」と思いました。
しかし、よく考えたら、このドラマでは魂が二つ存在している事が正しいんです!
なぜなら、
- タイムスリップして他人に乗り移った自分
- その時代を生きている本来の自分
の二人の自分がいるからです。
『時をかける愛』では、「自分と顔がそっくりな人に魂が乗り移る」設定です。
そのため、その時代を生きている「体も魂も本来の自分」がいるんです。
李子維は2003年→2010年へタイムスリップ。
王詮勝へ魂が乗り移り、2017年まで「タイムスリップしっぱなし」でした。
その間、2010年~2017年を生きている「本来の李子維」もいるのです。
空港のシーンでは、「王詮勝」と「本来の李子維」が二人とも大人で、見た目の差があまりなかったから、分かりにくかったわね。
黄雨萱がタイムスリップした時も、魂が二つ存在していました。
27歳の黄雨萱が1998年にタイムスリップした時、そこには6歳の黄雨萱がいました。
李子維にバイクで家まで送ってもらった、黄色い服を着ていた小さな女の子が黄雨萱です。
その時、1998年に黄雨萱の魂が二つ存在している事になりますよね。
「本来の李子維」について
空港のシーンで対面した、「本来の李子維」。
彼は彼の世界線ですでに「2003年交通事故→2010年の王詮勝になる→2017年飛行機事故→2003年に戻る」という事を経験しています。
そして2017年のその日、王詮勝の前に現れ、「この飛行機に乗るな」と言います。
その後、彼の世界線で2019年になった時には、黄雨萱と対面しているはずなんですよね。
「本来の李子維」は、王詮勝になったばかりの李子維が台南の32レコードを訪れる事も知っていました。
なぜなら、自分が過去に取った行動だから。
「本来の李子維」は、陳韻如の叔父さんに頼んで、その日に叔父さんに32レコードまで行ってもらったのです。
その時の叔父さんは、台北でカフェを経営していました。
32レコードには「片付けのため」に来たと言っていましたね。
なぜ王詮勝が来る時に叔父さんがタイミング良く現れたのか。
「本来の李子維」に指示されたからです。
ドラマ内で叔父さんが「すべて計画通り」と携帯で誰かと話しているシーンがありましたね。
あれは「本来の李子維」と話していたのでしょう。
32レコードで、王詮勝は叔父さんから「本来の李子維は2003年の事故により植物状態になっている」と聞きます。
しかしこれは嘘でした。
「本来の李子維」から、そう言うように指示されたのです。
嘘をついておかないと、本来の自分を探し出す事ができてしまうから。
王詮勝は本来の自分が植物状態だと思っていたため、空港で対面した時に驚いた表情をしていたのです。
王詮勝は「2017年飛行機事故→2003年に戻る」を経験した後、「本来の李子維」と同じ行動を取ります。
2010年になれば叔父さんに32レコードへ行くように頼み、2017年には空港へ行き「その時の王詮勝」に会い「この飛行機に乗るな」と言います。
そして2019年を迎え、黄雨萱にカセットを贈り、黄雨萱と対面しました。
これがドラマ本編に描かれている話です。
「その時の王詮勝」もまた、飛行機事故で2003年に戻り、彼の世界線で同じ事の繰り返しが発生するはずです。
メビウスの輪のような時間の輪っかができ、ぐるぐると繰り返されていきます。
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タイムスリップのルール
他の謎を解く前に「タイムスリップのルール」を見ておきましょう。
タイムスリップできる条件
明確な条件は解明されていません。
しかしネット上では、以下の2つが揃った時だと言われています。
- 伍佰の『ラストダンス』のカセットを聞く
- 「あなたに会いたい」という強い気持ちがある
カセットプレイヤーやイヤホンは条件ではないようです。
乗り移る時のルール
- 自分と顔がそっくりな人に乗り移る
- 乗り移られた人は白い部屋(体の中)に閉じ込められ、自分の体(乗り移った人)が何をしているか、何を話しているかを全て見る事ができる
- 乗り移った人と乗り移られた人はお互いの声を聞く事ができる
- 乗り移られた人のその直前の記憶は、乗り移った人も共有している
- 2回目以降のタイムスリップでは、前回、元の世界線に戻った時の少し前の時間へタイムスリップ
2回目以降は「前回の少し前の時間」にタイムスリップします。
少し前とは、数十秒前くらいですね。
つまり、タイムスリップして1998年にいる時は「連続した一定期間いる」事になりますね。
「この2週間だけ過ごして、元の時代に戻って、またタイムスリップしたら1ヶ月後だった」みたいな事ではありません。
現代へ戻る条件
タイムスリップした後、どうやって現代に戻るのか。
「現代で誰かに呼びかけられて起こされる」のが条件のようです。
- 黄雨萱の1回目:運転手に起こされる
- 黄雨萱の2回目:昆布に起こされる
- 謝芝齊の1回目:黄雨萱に起こされる
- 謝芝齊の2回目:警察に起こされる
タイムスリップする時も、元の世界線へ戻る時も、自分の意志でできる訳ではありません。
そして、「乗り移られた人が死んだ時」は、乗り移った人はそのまま元の世界線へ戻ります。
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その他の謎を解明する
なぜ補聴器が落ちていた?
物語の序盤。
廃ビルの前に補聴器が落ちていて、莫俊傑の物ではないかと疑われる件です。
2回目の視聴の際、この件について解明されているか注意して見てみたのですが、解明されておらず・・・。
中国語で調べてみました。
ドラマの脚本家によると、これについては、物語のbug(バグ)だそうです。
伏線でも何でもないとの事。
元々、脚本にはこの補聴器の謎について解明する話もあったそうです。
しかし、話の大筋とは関係ないため、監督と相談し、時間の関係でカットしたとか。
これだけ綿密に練られた物語なのに、結局バグなんかーい!w
たぶん他にも小さなバグはあるでしょうね。
「台湾で契約している携帯電話の料金をカナダの銀行口座から払うなんて、できないはず。その設定必要?」とか気になり出すと止まらない(笑)
謝兄弟の秘密
ドラマに登場した高校生の謝宗儒(兄の方)。
彼は全て「2019年からタイムスリップして乗り移った謝芝齊」(精神科医の弟の方)です。
謝弟が謝兄へ乗り移ったというのは理解していましたが、「どこからどこまでか」がよく分かりませんでした。
全てだったのですね。
謝弟は計2回、タイムスリップしていますよね。
【1回目】
黄雨萱の家でカセットを聞いた時。
1998年で陳韻如を石で殴ろうとしていた時、黄雨萱の声で2019年へ引き戻される。
【2回目】
黄雨萱の家からカセットと日記を奪い、追いかけてきた李子維を殺害した後。
自分の家でカセットを聞きタイムスリップ。
ドラマのラスト、陳韻如の首に注射をしようとした時、「警察だ!」の声で2019年へ引き戻される。
先ほどの「乗り移る時のルール」を見てみましょう。
ルール⑤により、2回目では「前回の少し前の時間」へタイムスリップ。
謝弟が【2回目】にタイムスリップして来た瞬間
=陳韻如を石で殴ろうとしていた時
黄雨萱が【1回目】にタイムスリップして来た瞬間
=陳韻如が謝弟に石で殴られ、入院していた時
黄雨萱が1998年へタイムスリップして来た時、すでに謝弟は兄へ乗り移っていた
これが分かった時はゾクゾクしましたね~(笑)
この設定も「そう来たか~」と思いました。
黄雨萱が学校の廊下で謝兄とぶつかり、「あなたは・・・!」と驚いている場面。
この時の謝兄は本当に謝兄だと私は思っていたのですが、これも謝弟です。
なぜその時、謝弟は冷静だったのか?
反応する事はできないから。
反応すると弟だとバレてしまいますからね。
黄雨萱がタイムスリップしてくる事は知っていたので、冷静だったのです。
同級生の女子を殺害したのも、兄へ乗り移った謝弟。
警察官の女性が
殺害に使われた薬品は標本や医療でしか使われない。
犯人は医療の知識がある人物。
と言っていましたよね。
謝弟は精神科医。つまり、殺害したのは謝弟。
ドラマに登場した高校生の謝兄は、全て謝弟。
謝弟は陳韻如に恋心を抱いていました。
雨萱にではなく、陳韻如に恋心を抱いていたのです。
だから彼はバスケ大会の写真で陳韻如(この時は雨萱の魂ですが)が写っているものを欲しがったのです。
ドラマのラストで謝弟が陳韻如の首に注射をしようとしたとき、「警察だ!」という声で謝弟は2019年に引き戻されます。
その時、注射器を投げ捨て、「僕じゃない」と言い、走り去っていったのは、元に戻った謝兄。
この時、謝兄はやっと自分の体に自分の魂が戻ったのです。
そして弟が何をしていたかをずっと見ていたため、精神を病んでしまい、精神病院へ入院したのです。
陳韻如を殺害した犯人は?
陳韻如は「殺害された」のではありません。
自殺です。
陳韻如は廃ビルから飛び降り自殺をします。
陳韻如は、学校の屋上で
自殺すると誰の記憶にも残らない。
ただ陰気な奴が自殺しただけと思われる。
けど、誰かに殺されたなら、みんなの記憶に残る。
と言っていました。
それを聞いていた(読唇術で読んでいた)莫俊傑は、自分が殺したように見せかけたのです。
ですから、後の時間では「陳韻如は莫俊傑に殺害された」とされているのです。
しかし本当は自殺だったのです。
莫俊傑は冤罪なのに刑務所に入り、2008年に出所した後、陳韻如と同じ場所で自殺しました。
彼はそれほどまでに陳韻如を好きだったのですね。
あえて「犯人」を挙げるならば、それは黄雨萱。
黄雨萱の明るさによって周りと溶け込んでいた陳韻如。
陳韻如自身に戻った後、周りから「前の陳韻如は陰気だから嫌いだった」と言われ思い悩みます。
黄雨萱のフリをするも、李子維には「どうすればまた黄雨萱に会える?」と言われ絶望します。
そして「消えたい願望」が強くなり、自殺に至ったのです。
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不満点と良かった点
不満点
最後の最後で、1998年へタイムスリップした黄雨萱が、海辺で李子維と別れの挨拶をするシーン。
あれ、2人がCGで消えるんですよね・・・。
30年前の演出みたいで、ちょっと納得いきませんでした~・・・。
タイムスリップのルールは「誰かに呼びかけられて元の世界線に戻る」のはず。
普通にそれで元の世界線に戻ればよかったのでは・・・と思いました。
良かった点
最終的には「誰も死なない世界線ができた」ので、救いのあるドラマだと思います。
- 陳韻如が自殺しない→莫俊傑は後の時間で自殺しない
- 黄雨萱がタイムスリップして来ない→李子維は2019年で死なない
- 黄雨萱と精神科医が知り合わない→精神科医は1998年へタイムスリップしない
まぁ、本物の王詮勝は自殺したかもしれませんが・・・。
他の人達は誰も死なない世界線になったんですよね。
まとめ
台湾ドラマの質がどんどん上がっているなぁ・・・と思えたドラマです。
私は断然、莫俊傑派。
彼のように優しく温かく見守ってくれる人、なかなかいないわよ。
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コメント一覧 (4件)
面白く読ませてもらいました。台湾の解析ブログで提示されていたメッセージが刺さりました。黄や李のような人気者が、陳や王のような社会的マイノリティをどれだけ関心を持てるか、持てていたら彼等のような存在が自殺を選ぶことを減らせる、というもの。最近は陰キャラとか言って簡単に切り捨てますけど、自分も含めてどれだけ苦しんでる人に目を向けてあげられていただろうかと自省しました。
別で。謝兄が療養所で行っていた、「やったのはアイツトアイツダ」発言。「彼等」ではなく。兄が指す2人は誰だったのかなあと答えが出てません。
はじめまして。このドラマは何回も見てこそようやく紐解かれた様な気がしました。一回見ただけでは正直わからなかった事多かった。精神科医になってる弟が最初から兄に乗り移ってたんですね、めちゃくちゃ納得できました。おじさん子維とユンルーのおじさんが電話で話してた全ては計画通りって言ってたのって何話目でしたっけ。
超難解なドラマでした、今まで、刷り込まれたタイムスリップの考え方も、改めなければいけませんね。たとえば、
昔の自分に会ってはならない、触ってはいけないとか・・・・・
青春ドラマでよかったです。歳を取ってしまえば、タイムスリップを利用した、お金儲けとか考えてしますので・・・
このドラマは、明らかに、脚本が日本のドラマを越えています、最近の台湾ドラマは、すばらしい!
本当に難解なドラマですよね。
私も二回見て分かった部分が多々あります。
タイムスリップもいろんなパターンがあると思うのですが(物理的に飛んだり自分の意志で自由に行き来できたり)、
このドラマのような設定は見た事がなく新鮮でした。
ここ数年で一気に台湾ドラマの質が上がった気がします。
(というか日本ドラマの質が落ちた?笑)